大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)10981号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔争点〕被告会社は訴外萩原聖宛に本件約束手形を振出し、原告は右訴外人から裏書譲渡をうけこれが所持人となつたので、原告は被告会社にたいし手形金の支払を求めたところ、被告会社は本件手形は偽造であると主張した。

これにたいし、原告は本件手形は被告の代理人訴外須田によつて振出されたものであるが、かりに須田が無権限で本件手形を振出したとしても、同人は被告会社の代表者印を押捺して被告のため営業上の書類の作成行使を許され、いわゆる署名代理の方法により約束手形を振出すことも許されていたのであるから、本件手形振出について民法第一一〇条に定める表見代理の適用がある。けだし会社が手形振出に必要な印などを使用人の管理に委せ、同人の恣意のまま手形を自由に作成しうる状態に放置していた事情の下にあつては、その使用人のなした無権限の手形行為につき、表見代理の法理の適用があり、かつその第三者の範囲は手形行為の直接の相手方のみならず、その後の手形取得者をも含むと解すべきであるからであると主張し、大阪地裁昭和三四・三・一〇判決下級民集一〇巻三号四五五頁を引用した。(争点一)

さらに原告は予備的再抗弁として、本件手形が訴外須田の偽造に係るものと認められる場合には、右須田の手形作成行為は不法行為である。そして右須田は昭和三九年五月初ころから月額三、〇〇〇円乃至五、〇〇〇円をうけて被告会社に雇われ、被告会社の業務に従事中、右手形の偽造をなしたというのであるから、この場合被告会社は被用者須田の不法行為につき使用者として民法第七一五条による責任を免かれないと主張した。(争点二)

判決は一の争点については民法第一一〇条にいう第三者は手形行為の直接の相手方に限るとの見解をとり、二の争点については須田はいわゆる経営管理士で、被告会社の被雇者でないとして民法第七一五条による被告会社の賠償責任を否定し、つぎのとおり説明している。

〔判決理由〕「原告は、原告において本件手形が正当な代理権限によつて振り出されたものと信じてこれを取得したとし、民法第一一〇条の規定に基く表見代理の主張をするが、その代理形式の点はともかくとして、本件の場合原告は被告から直接に本件手形を取得したものではないから、右法条にいう第三者に当らない。したがつて、右主張について審理するまでもなくこれを失当とするの外はない。この点についての原告の解釈論は当裁判所のとらないところである。したがつて、被告の振出人としての責任を認めるべき特別事情を見出し得ない。

「さらに原告は、訴外須田をもつて被告の被使用者と同視すべきものとし、民法第七一五条による損害賠償の請求をも予備的に主張するが、証人須田聖の証言によれば、前記のとおり、訴外須田はいわゆる経営管理士として被告の経営方針および経理運営について調査および助言をする立場にあつたこと、毎月三千円程度の嘱託料の給付を受けていたとはいえ常勤でなく、被告とは独立別個の営業者として、便宜サービス的に前認定の正当な約束手形の作成に当つたに過ぎないことなどが認められ被告会社が右訴外人を指導監督する立場にある同訴外人の使用者であるとは認定できないので、民法第七一五条の適用をすべき余地はない」(畔上英治)

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